医療法人が準拠すべき会計基準等
医療法人は、日々の活動から生じる財産の動きを会計帳簿に記録し、これらの記録に基づいて計算書類等を作成しなければならない。財産の動きを会計帳簿に記録する方法、および、これらの記録から計算書類等を作成する方法は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行にしたがって行わなければならない(「医療法」第50条)。
一般に公正妥当と認められる会計の慣行とは、一般的な医療法人が会計を行うにあたって、通常、選択肢にあがる方法のことを意味し、必ずしも1つの方法に限られるわけではない。このページでは、医療機関を開設する個人または法人において使用されることが予定されている病院会計準則、四病院団体協議会版医療法人会計基準、厚生労働省令医療法人会計基準および社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の4つをとりあげる。しかし、営利企業においても使用される企業会計原則、企業会計基準、中小企業の会計に関する指針、中小企業の会計に関する基本要領なども、一般に公正妥当と認められる会計の慣行として認められる。
病院会計準則
病院会計準則は、病院または診療所における財産の状態を適正に把握し、病院の経営体質の強化、改善向上に資することを目的として作られた会計基準である(「病院会計準則」第1)。病院会計準則は昭和40年(1965年)に作られ、その後、数次の改定が行われているが、現在の最新版は平成16年(2004年)に改正されたものである。
病院会計準則は、平成18年(2006年)に都道府県知事に対して行われる計算書類の届出が法人単位になるまで、医療法人が開設する病院または診療所の決算の状況を届け出るにあたってしたがわなければならない会計の基準とされていた。しかし、計算書類の届出が法人単位になった現在では、他の会計基準と同様に、一般に公正妥当と認められる会計の慣行のひとつとなっている。
四病院団体協議会版医療法人会計基準
四病院団体協議会版医療法人会計基準(以下、「協議会基準」という)は、四病院団体協議会会計基準作成小委員会が2014年(平成26年)2月26日に公表した「医療法人会計基準に関する検討報告書」のなかに示されている会計基準である。協議会基準は、病院または診療所の決算の状況を把握するために利用される病院会計準則とは異なり、医療法人全体の計算書類を作成するために利用される会計基準となっている。
協議会基準は、会計情報の報告義務を負う医療提供者側が作成した会計基準であるが、通知「医療法人会計基準について」(平成26年3月19日医政発0319第7号、最終改正平成30年3月30日医政発0330第33号)のなかで、一般に公正妥当と認められる会計の慣行のひとつに該当するものとして認められている。
厚生労働省令医療法人会計基準
厚生労働省令医療法人会計基準(以下、「省令基準」という)は、厚生労働省が平成28年(2016年)10月1日に公布した会計基準である(平成28年厚生労働省令第95号)。「医療法施行規則」第33条の2に規定される要件のいずれかに該当する医療法人(以下、「『医療法』第51条第2項の医療法人」という)は、原則として、この省令基準にしたがって会計を行わなければならない(省令基準第1条)。
「医療法」第51条第2項の医療法人は、作成した計算書類について公認会計士または監査法人による監査を受ける必要がある(「医療法」第51条第5項)。公認会計士または監査法人は、医療法人の計算書類を監査するにあたって、これが省令基準にしたがって作成されているかどうかを確認する(日本公認会計士協会「医療法人の計算書類に関する監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(非営利法人委員会実務指針第39号)第10項ないし第17項)。すなわち、省令基準は、計算書類の会計基準への準拠性を確認するにあたっての基準として位置づけられる会計基準である。
なお、「医療法」第51条第2項の医療法人以外の医療法人についても、省令基準にしたがって会計を行うことは可能である。
社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下、「社会医療法人債会計規則」という)は、厚生労働省が平成19年(2007年)3月30日に公布した会計基準である(平成19年厚生労働省令第38号)。社会医療法人債を発行する社会医療法人(過去に発行した社会医療法人債の全額の償還が済んでいない社会医療法人を含む)は、この社会医療法人債会計規則にしたがって会計を行わなければならない(社会医療法人債会計規則第1条)。
社会医療法人債は、「金融商品取引法」において、有価証券のひとつとして規定されている(「金融商品取引法」第2条第1項第3号)。社会医療法人債会計規則とは、投資者保護の観点から、社会医療法人債を発行する社会医療法人(過去に発行した社債医療法人債の全額の償還が済んでいない社会医療法人を含む)に対して、公開会社(株式を上場している企業)と同等の情報開示を行わせるために制定された。
なお、社会医療法人債を発行する社会医療法人は、省令基準の適用対象法人となっているが、社会医療法人債会計規則に定めがある事項については、省令基準に優先して、この社会医療法人債会計規則に従わなければならない。