「医療法」における会計情報の届出・報告規制

2026年8月15日現在

「医療法」には、医療法人に対して会計情報の提供を求める規定が設けられている。この会計情報の提供を求める規定には、大きく分けて2つのものがある。ひとつは、医療法人全体を対象として作成された計算書類を届け出ることである(「医療法」第52条第1項)。もうひとつは、医療法人が開設する医療機関(病院または診療所)ごとに作成された経営情報を提出することである(「医療法」第69条の2第2項)。

医療法人の計算書類の届出

計算書類の作成

医療法人は、会計年度ごとに、主たる事務所の所在地の都道府県知事に対して事業報告書等を届け出なければならない(「医療法」第52条第1項)。事業報告書等とは、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者との取引の状況に関する報告書その他一定の書類の総称である(『医療法」第51条第1項)。計算書類とは、会計帳簿に行われた記録をもとに作成された書類のことをいう。事業報告書等に含まれる書類のうち計算書類に該当するのは、財産目録、貸借対照表、損益計算書および関係事業者との取引の状況に関する報告書の4つである。

これらの計算書類は、厚生労働省が定める様式にしたがって作成されなければならない。この様式は、「医療法人における事業報告書等の様式について」(平成19年3月30日医政指発第0330003号、最終改正令和7年3月31日医政支発0331第4号)のなかに示されている。

計算書類の用途

医療法人が届け出た計算書類は、提出先の各都道府県知事が医療法人の財産の状況を把握するために使用される。「医療法」では、都道府県知事に対して、所管の医療法人の運営が適切に行われているかどうかを監督する責任が課せられている(「医療法」第63条・第64条)。この監督責任を果たすために、各都道府県知事は所管の医療法人の状況を把握しておく必要がある。

医療法人が届け出た計算書類は、提出先の都道府県知事に請求することで、誰でも閲覧することができる(「医療法」第52条第2項)。医療法人の計算書類の閲覧請求は、インターネット経由でも行うことができる(「医療法施行規則」第33条の2の12第5項)。具体的な方法は、電子メールで閲覧請求を受け付ける方法、専用のウェブサービスを利用して閲覧請求を受け付ける方法、各都道府県のウェブサイトにアップされているものを各自でダウンロードする方法など、都道府県によってさまざまである。なお、閲覧請求となる計算書類は、原則として、直近3年間に届け出があったものにかぎられる(「医療法施行規則」第33条の2の12第5項)。

医療機関の経営情報の報告

報告すべき経営情報

医療法人は、主たる事務所の所在地の都道府県知事に対して、自らが開設する医療機関(病院または診療所)ごとの経営情報を報告しなければならない(「医療法」第69条の2第2項)。この医療機関ごとの経営情報には、医療機関の名称、所在地その他の保基本情報、収益および費用の内容、職員の職種別人員数その他の人員に関する事項などがある(『医療法施行規則』第38条の6)。このうち収益および費用の内容ならびに職員に関する事項の一部は、会計帳簿に行われた記録をもとに作成される。

医療機関ごとの経営情報の報告も、厚生労働省が定める様式にしたがって行わなければならない。この様式は、厚生労働省のウェブサイトのなかにある「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」のページの「経営情報等の報告様式」において示されている。

経営情報の用途

医療法人が報告した医療機関ごとの経営情報は、各都道府県が地域において必要とされる医療を確保するために必要な調査および分析を行うために使用される(「医療法」第69条の2第1項)。また、この分析の結果は、厚生労働大臣が国民に対して情報提供を行ったり、医療に係る政策を立案等するにあたっての基礎資料としても使用される(「医療法」第69条の2第3項・第4項・第69条の3、「医療法施行規則」第39条の2の3)。

なお、国民に対する情報提供や政策立案等のための基礎資料の作成は、独立行政法人福祉医療機構に委託することができるものとされている(「医療法施行規則」第39条の2)。独立行政法人福祉医療機構が提供するウェブサービス「WAM NET」のなかに設けられている「医療法人経営情報データベースを活用した分析等」のページには、全国の医療法人から提供された情報をもとに作成された統計資料が示されている。