医療法人は非営利法人か
現在、「医療法」に規定されている医療法人は、原則として非営利法人に該当します。しかし、経過措置医療法人については、非営利法人の要件を満たしていないため、厳密な意味での非営利法人には該当しません。
非営利法人の要件
わが国では、長い間、「非営利法人とは何か」ということについて、法律上の定義が存在していませんでした。しかし、2003年から2004年にかけて行われた「公益法人制度改革に関する有識者会議」において、どのような法人を非営利法人というかが定められました。有識者会議の報告書には、その要件について、次のように述べられています。
② 営利法人との区別
社員の権利・義務の内容として、ア)出資義務を負わない、イ)利益(剰余金)分配請求権を有しない、ウ)残余財産分配請求権を有しない、エ)法人財産に対する持分を有しないこととし、営利法人制度との区別を明確化する。
このように、非営利法人は、社員が有する権利や義務の内容、具体的には、法人に対する出資の要否と、出資者としての立場を根拠とする法人からの財産の引き出しの可否によって規定されます。厚生労働省は、医療法人制度が創設された当初から公益法人の規定を参考にしながら制度の見直しが行われてきたことに鑑みて、公益法人制度の改革に関しても、十分に整合性を保ちながらこれを導入していく必要があるとして(医業経営の非営利性等に関する検討会「医療法人制度改革の考え方〜医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿〜」2005年、12頁)、この考え方を平成18年(2006年)の「医療法」改正にとりいれました。
医療法人には、社団が医療法人となった社団医療法人と、財団が医療法人となった財団医療法人とがありますが、財団医療法人については、そもそも出資という概念が存在せず(もともと財産が存在しているところからスタートする)、これを理由として財産を引き出す権利をもつ人も存在しないため、自動的に非営利法人となります。一方、社団医療法人については、社団を構成する社員の権利や義務の状況をみて、それが非営利法人であるか、非営利法人であるかが判断されることになりますが、次の経過措置医療法人以外の医療法人(新型医療法人)については、非営利法人として認められる4つの要件を充足するため、非営利法人となります。
経過措置医療法人
昭和25年(1950年)に医療法人制度が創設されたときには、このような「非営利法人とは何か」を規定するものはありませんでした。しかし、営利法人が病院その他の医療機関の開設主体となることを避けるため、当時の政府は、医療法人に対して、営利法人において認められていた剰余金の配当(上述のイ)の要件)を禁止すること(「医療法」第54条)をもって、医療法人を「営利法人でない法人」とすることにしました(「医療法の一部を改正する法律の施行に関する件」(昭和25年8月2日発医第98号)第一、2。)。しかし、その一方で、社団医療法人の社員が法人の財産に対して持分請求権をもつことは問題のないこととされていたため、法人を解散するときや、特定の社員が社団から離れるときに、自らの持分請求権を行使して、法人から財産を引き出してしまうということも可能となっていました。
しかし、上述のように、平成18年(2006年)の「医療法」改正によって、その施行日後に設立される社団医療法人については、社員が法人の財産に対する持分請求権をもつことが原則として禁止されることになりました。この際、改正法の施行日前に設立されていた(または設立申請が行われていた)社団法人については、社員の持分請求権を認める定款の定めを、当分の間、有効なものとするとされました(「医療法」平成18年6月21日改正附則第10条の2)。このような社員の持分請求権を認める定款の定めが経過的に有効なものとされている社団医療法人のことを経過措置医療法人といいます。経過措置医療法人では、社員の持分請求権が認められていることから、非営利法人の要件を満たしません。この意味で、経過措置医療法人は、「営利法人でない法人」ではあるが、「非営利法人でもない法人」ということになります。